イスラエル視点のドキュメンタリー映画『ホールディング・リアット』は観ることを逡巡したが......
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<ハマスに娘を拉致された一家の苦悩は、被害と加害の問題を単純化すべきでないと改めて気付かせてくれる>
ハマスに娘を拉致された家族を被写体としたドキュメンタリー。
『ホールディング・リアット』(3月7日日本公開)を観る前の情報はそれだけだった。その時の気持ちを正直に書けば、かなり逡巡があった。
ドキュメンタリーを撮るとき、視点をどこに置くかはとても重要だ。
特にイスラエル=パレスチナ問題のように沿革や現状が複雑であればあるほど、視点はとても大きな意味を持つ。そして多くの(全てではない)ドキュメンタリー制作者は、声が小さくて弱い側や虐げられた側に視点を置く。強い側の代弁なんてしたくない。
でもその視点を、ブランドン・クレーマー監督は拉致被害者に置くことを選択した。つまりイスラエルの側だ。ならばハマスの残虐さとネタニヤフ政権の正当性ばかりが強調されるのではないか。そう思いながら観始めた。
2023年10月7日朝、パレスチナ自治区ガザとの境界に近いキブツ(農業共同体)、ニールオズはガザから侵入したハマスの武装勢力に襲撃された。住民およそ400人のうち4分の1が殺害されるか人質となり、リアット・ベイニン・アツィリは夫アヴィヴと共にガザへと連れ去られた。
物語はその直後から始まる。襲撃で破壊され焼かれた多くの住宅や庭園。そこに立ち尽くすリアットの父であるイェフダ。
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